せっかちさん。
「最近、お仕事の調子、どうです??」
親しい間柄の友人に、こんなふうにたまに仕事の話を振ることがある。
相手を気遣ってのケースもあるけれど、
自分が就いたことのない仕事を友人達はしているので、
純粋に「面白そうだな」って感じの好奇心からの面で興味があるのと。
あとは、
その人について、もっと知りたいとか。
「この人の姿勢を学びたい・見習いたい」って思った時に、尋ねたりもする。
職場で起きる出来事って、いい事ばかりじゃない。
だからこそ、その起きた出来事をこの人はどういう風に解釈(捉え)して、
どういう風に対処したのか。
そういう部分が未熟な私にはすごく新鮮で刺激的で、学べることも多かったりする。
だから後者のように自分が特に尊敬している方の場合は、ちょいちょい「お仕事の調子、どうですか??」って聞いちゃったりします。
今回話を伺った方は、普段からすごくすごく謙虚な姿勢の方で。
こちらが褒めた時の口癖は「いや、オレなんてまだまだですヨ」
単なる建前でそう言っているわけではなく。
素直に、そう口にされる方。
(たまに冗談と照れ隠しと茶目っ気を含めて「まぁね♪(笑)」と返してくるケースもあるけど(笑))
相手への物の伝え方も丁寧で、相手の立場や心境に配慮した上で言葉を選んでいらっしゃるし。
上の立場(役職)に就いている方だけれど、偉ぶることもなく。
「オレはむしろ支えられてる立場なんで。アイツら居なかったら、オレの仕事回らないですから。マジで(笑)」とまで言う。
先を見通す力もすごくあって。
仕事の話では常に相手の3手、4手先を考えた上で回答されてる。
なので、この方の話はいつもすごく勉強になる。
でも。
常に先を先を、と考えているが故に、今回の話の中で引っかかる点があった。
仕事を通して、今後の人生のビジョンについて話をされている時だった。
「もう親も今、あの年齢ですし。それ考えると今みたいに両親達だけで生活していけるの、たぶんあと10年、15年くらいでしょ? それ以降は何らかの形で手助けが必要になってくるわけじゃないですか。その時、今のままのオレじゃ全然ダメだし。そう考えると、絶対時間が足りないんスよね。。」
『これまで育ててくれた両親を、今度はオレが支えなきゃ。
そのために、もっともっと頑張らなきゃ。』
素晴らしい考えだと思った。
この方の優しいお人柄がすごく出ている話だった。
でも。
同時に、ちょっと寂しくもあった。
常々全力で仕事をされている方で。
ほぼ毎日、残業。
休みは実質、職場自体がお休みとなっている週1日。
毎年くる繁忙期の時期は、会社で寝泊まり。
仕事=生き甲斐というタイプの方なら、こういう生き方もアリなのかもしれないけれど。
この方は必ずしもそうではなく。
(仕事い対して、できるだけ楽しんで挑めるような工夫はすごくされているけれど)仕事はやっぱり会社のためだったり、自分の周囲にいる人のために、という部分に重きを置いている感じの方で。
故に「無理してるな。。」って感じが否めなくて。
(差し出がましいと思いながらも)すごく心配になった。
私「お休み、もっとちゃんと取った方がいいじゃないんですか?」
相手「まぁそうなんですけどねー・・なかなか、ね(笑)」
私「激務に就いている方は、取れるタイミングを待ってたら休みなんて取れないですよ。ああいうのは捻り出すモノです(笑)」
相手「そうですよね。ああ、でも仕事の進み具合とかいろいろ見て、取れそうな時は「明日休むわ」言って取ってますヨ? まぁ、休みって言っても家の事して飯食いに行って、ってやって。明日の仕度してたら終わるんですけどね」
(何のための休みだよ、オイ。。)
私「せっかくの休みなんですから、たまにはちょっと遠出してみるのもいいんじゃないですか? 日帰り旅行とか^^」
相手「うーん、平日だと友達と休み合わせるのが難しいじゃないですか。オレにとって旅行は一緒に行く相手がいるから楽しいんであって。一人で旅行行っても面白くもなんともないんですよね。」
・・・手強すぎるorz
いや、純粋に私の話の持って行き方がヘタクソって話も大いにありますが。
・・仕事関連の話って、その人の生き方とかポリシーがけっこう詰まっている部分だと思うので(男性の場合は特にそう感じる)
基本的にはあまり対立する意見というか、異を唱えたくなくて。
何だか、相手の価値観を否定してしまうような感じになってしまう気がするので。
だけど。
それでも、
「異を唱えなきゃ」と、強く思ったんです。
人の生き方に意見するなんて、差し出がましい。
そうわかっていても「伝えたい」という衝動を抑えきれなかった。
でも、
うまく伝えられない。
このままだと、相手に不快な思いをさせるだけで。
きっと、私の伝えたいことは、伝わらずに終わってしまう。
これ以上、下手な言い回しを重ねるのは、相手をうんざりさせてしまうだけだ。
そう思って。
ない頭を絞って、言葉を考えた。
私が、この方に伝えたいことって、一体何なんだろう。
もっと、シンプルに。
もっと、真っすぐに 。
「 あの。」
「・・もう少し。今を楽しんでも、いいんじゃないですか?」
確かに先のこと、これからのことをきちんと考えて、そこから逆算して物事を考えられるっていうのは、素晴らしいことだと思います。
けれど。
未来のために、今の自分を犠牲にするということは、果たして正しいことでしょうか?
親御さんのこれからのことも、すごくよく考えていらっしゃって。
ものすごく、ご両親想いの優しい方だと思います。
でも。
ご両親が、自分たちの将来のために息子が今の自分を犠牲にしていると知ったら。
ご両親はそれを、嬉しく思うでしょうか。
ご自身が、逆の立場だったらどうでしょう。
きっと「自分たちのことは自分たちで何とかするから。あなたは自分のやりたいことをやりなさい」って、言ってくださると思います。
「もう少しだけ。自分のために、自分の人生の時間を使ってもいいんじゃないかと思うんです」
そんな言葉を、伝えた。
相手の方は「あぁー・・・・」と言った後、しばらくの間、沈黙して。
「そうか。そうですよね。・・うん、確かに。うん。」と、何度か反芻するように呟いて。
色々と考えてくださっているようでした。
その反応によって、私が伝えたかったことが、少し伝わった気がして。
嬉しかった。
そんな、ある日の夜のできごと。
「永遠」とか「絶対」とか。
午前4時前。友人NからLINEが届いた。
内容は「ちょっと色々あった。話せる時に話そう」という短いものだった。
「あぁ、(友人N自身に)何かあったんだな」と思った。
この友人のこの話の振り方だと、おそらく私にも関わる話の内容が含まれている。
けれど「話を聞いてほしい」というのが実際のメインかな、と思った。
私自身に大きく関わる内容だと、この友人が判断したのなら「なるべく早くどこかで話ができないか」「(もし可能なら)起きてるなら、ちょっとだけでも話せないか」と打診してくるから。
ただ、そういった案件であっても、私にとっては「あぁ。放っておいていい。」というものがほとんどなのだけれど。
(あちらが心配してくれている状態なので、こんなバッサリした言い方はしないけれど)
寝返りをうちながら「少し話そうか」と返信をする。
この時間にこの内容の連絡が来るということは恐らくこの友人自身、ついさっきこの件について、誰かに聞いたばかりで。
色々と不安を抱えてる状態だから、私にこのメッセージを飛ばしてきたのだろう。
心配性な彼女は、落ち着かなくておそらくこの後、あまり眠れないだろう。
私自身はこの時、幸いにも夕飯後まもなく寝落ちして、0時過ぎに目が覚めて。
つい先ほど枕に頭を預けたばかりで、まだ眠気が来ていない状態だった。
相手から明日の仕事を気遣う内容のメッセージが届いたので、上記を説明すると「それなら少しだけ話せる?」と打診があって。
起き上がってそこから2時間ほど話をした。
話の内容は。
私自身と、友人Nが「かつて親しい間柄の友人だった」人物についてのものだった。
(現在は残念なことに、それぞれの理由で私も友人Nも、その友人とは絶縁状態にある)
友人Nの友人二人が、その「かつての友人」とまだ友人関係にあり。
「かつての友人」の近頃の言動について二人がショックを受けたらしく、そのことで二人がNさんに相談に来て。
それでつい先ほどまで、その二人とNさんとで、話をしてきたらしい。
長くなるので要約すると、友人Nが私に話したかった内容というのは、
話の流れで過去にあった事例として私とその「かつて友人だった人物」とのやり取りの話を(私の名前は出さなかったが)少ししてしまった。
私自身が、他の人のあまりよくない話を、それに関係する人に話す事をあまり良しとしない(自分が悲劇のヒロインになったり、例え自分が嫌いになった相手だったとしても、相手の名誉を汚すような発言を(例え自分からしてそれが事実であったとしても)他の人にすることを好まない)ので、
その意思を知っていた友人Nは「かつての友人」と私のやり取りをその人と関係性のある他の人に話した=私への裏切りを、自身が行ったと思っていて。
それを申し訳なく思って、謝りに来たようだった。
友人N自身がその二人に話したという内容は私自身、話しても大して問題ないと思える範囲のもので。
(そもそも、バラされた際に本格的に困るような詳細な内容を私は打ち明けないので)
もしその話がその二人の口からどこかに漏れたとしても、私の手に負えないような事態にはならない。
そして何より、私自身、話したことについて、何も怒っていない。
むしろきちんとその旨を包み隠さずに報告にきてくれたことは嬉しいし、それによってあなたの「話していい・悪い」などの判断基準が私の基準に近いこともわかった。
(一応、話していいかどうか判断に迷う場合は事前にその相手に伺いを立てておくべきだろうけど、とは補足しておいた)
こういった事態が周囲で起こっている、ということも内々に伝えに来てくれたことで、把握できたし。
それによって、今後何か起こってもスムーズな対応がしやすくなった。
むしろ、ありがとう。
そう伝えると、友人Nは少し落ち着いたようだった。
あとは、相談をしに来たそ二人の友人に対して、自分は果たして正しいことを言えたのだろうか、傷つけてやしないだろうか、ということを不安に思っているようだった。
誰かに、自分が行ったことを「大丈夫だよ」って言って欲しかったんだろうな、って思った。
なので、それも言葉にして伝えた。
話がひと段落して気持ちも落ち着いたようで。
そこから少し、別の話をして。
その中でふと、友人Nがこんなことを言ってきた。
「あのね、」
「・・もし例えば。例えばだけど。HちゃんとYの間に今後、何かあって。二人の関係が崩れて、二人が友達同士でなくなったとする。」
(※Yさん・・現在、私に良くしてくださってる友人の一人。友人NとYさんは、私よりもずっと付き合いが長く、またすごく仲の良い間柄)
「でももしそうなったとしても。私、HちゃんとYとは絶対友達でいるからね! 二人とも、私にとって、すごい大事な友達だから! どっちかだけと友達でいて、どっちかだけを選ぶってことは、絶対しないから。そのことだけは、忘れないでいてほしい!!」
「HちゃんもYも、私から見て考え方とか二人ともすごいオトナだし、何かあってもきっとそんなことにはならないと思うんだけど。」
「でも、もしそういう事になったら、って思った時。」
「・・伝えておきたいと思った。」
友人Nは、そう言った。
彼女なりの精一杯の想いが込められたその言葉は、
あたたかく、嬉しかった。
しかし同時に、
少し悲しく。
胸のどこかが、痛む言葉だった。
私「うん。ありがとう。・・でもね、Nさん。」
私「私とYさんの関係が崩れてしまうということは。それはどちらかが、大きく変わってしまった時かも知れない。」
私「毎日、それぞれの身の回りで色んな出来事が起きる。それによって人は少しずつ、変わっていく。昨日の私と今日の私は、まったく同じように見えても、全てが同じではないように。」
”ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。”
昔、古文でそんな言葉を習ったことがあったな。
言いながら、そう、ふと思った。
私「Yさんとの関係が崩れた時、私は今の私とは比べようもないくらい、変わってしまっているかもしれない。それほどに私が変わってしまっているのなら、Nさんにとっても、私との関係を続けるのが困難な状態かもしれない」
私「その時、今Nさんが断言した言葉は、きっとあなたの足かせになる。私に対する誓いを、あなた自身で破ることになるから。」
私「・・あなたは、誓いを守ろうとする人だ。だから、もしそうなった時。あなたはこの言葉を、必ずしも守る必要は無いよ。その時のあなたが、その時の私を見て判断すべきだから。」
私のその言葉を受けて、戸惑いながら、弱々しい言葉で「うん」と言った彼女を目の当たりにして、
我ながら、酷いことを言っているな、と思った。
先ほど彼女が発した言葉は、私への思いやりの言葉だ。
その想いを、踏みにじるような発言をしてる自分が、悲しかった。
けれど。
果たせなかった約束を抱えて生きることが、どれだけ苦しいことか、私は知っている。
そういう思いを、させたくなかった。
人の命は、永遠じゃない。
いつかは終わりがくる。
不変でない、そもそも「限りある存在」である人間が「永遠」とか「絶対」という言葉で約束をするのは無理があると、私は思っている。
心が優しい人ほど、そういった言葉を使いたがる傾向がある気がする。
”自分自身、寂しい思いをしたからこそ、
相手にはそんな思いを、絶対にさせたくない。”
そういう優しい想いが、よく伝わってくる。
・・人から裏切られて、ツラい経験をしてもなお、人を信じようとしている人達だ。
私自身は、そこまで純粋でいられず。
心のどこかで、裏切られることを想定して。
人と少し距離を置いて、接している自分がいる。
自分に向けられた愛情には、応えたい。
でも、
自分から相手へ愛情を向けるのは、
正直、恐い。
「(その想いに)応えてほしい」という気持ちが、芽生えるから。
「私からの愛なんて、相手にとって負担にしかならないだろう」
そんな思いがある。
だから。
見守っているだけでいい。
「なんか、一緒に居ると温かいな」
「心地いいな」
私が相手に向ける愛は、
相手がそう感じるくらいの。
相手が返す必要も、応える必要もないくらいの愛でいい。
本当は。
自分へ向けられた愛を受け取る喜びも、もちろんあるけれど、
実はそれ以上に、相手へ愛を与える喜びがあることも、知ってる。
それを、(相手が私に)与えることがかなわない距離にいる私は、
もしかしたら少し、
卑怯なのかもしれないな、と、
今、書きながらそう思った。