deep-blue00’s blog

ゆるさ、模索中。

コーヒーの味

「コーヒーって、こんなにおいしい飲み物だったんだな…」


私が朝食後のヨーグルトに手を付け始めた頃。旦那さんが傍らでそうつぶやいたのが聞こえた。ダイニングテーブルに並んで腰掛けた旦那さんは、コーヒーを片手に窓の外を見ていた。窓の外で陽の光が雨雲の隙間から差したり隠れたりしていた。

しみじみとそうつぶやいた旦那さんに私は首を傾げた。旦那さんは私と知り合う前からコーヒーが好きで。知り合って親しくなった際、メールや音声通話をしている時に「今コーヒーを淹れてる」という言葉が度々出て来るほどだった。元々好きな物のおいしさを再発見するって、どういう事だろう。単純にお気に入りのコーヒー豆を見つけたからだろうかと私は思ったけれど、違うようだった。

「前の職場でも豆買ったりしてコーヒー淹れてよく持って行ってたけどさ。その時飲んでたコーヒーは、水や麦茶を飲むのと変わらない『清涼飲料』って感じで。ただのどの渇きを潤すためだったり、刺激のためだったり。次の行動に移る前の、単なるワンクッションみたいなものだった。」

旦那さんの前職はかなりハードなもので。残業はもちろん、帰宅後や休日にも電話が鳴り。デート中に電話で席を立たない日の方が珍しいくらいだった。
電話を終えて、疲れた顔で「ごめんね」とすまなそうに謝ってくる彼の顔を見るのが、いつも悲しかった。

「でも今は。奥さんと肩を並べて座って、窓の外に季節の移ろいを感じながら飲むコーヒーがこんなにおいしい物だったんだって、ハッとする。あのまま一人で暮らしていたら、気付けなかった。」


ありがとう、と言った旦那さんの表情は穏やかで。色々なことがあって、大変な思いもたくさんしたし、二人で悩んだりしたこともあったけど。
旦那さんの表情を見て『きっと、これでよかったのかな』と、少し肯定的に思えた朝でした。


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