遠い日の記憶。
仕事の帰り道。
歩道でスクーターを押して歩く、女性の方とすれ違いました。
何でスクーターを押して歩いているんだろう、と疑問に思い、ふと顔をあげると。
その座席の上に、幼稚園くらいかな? 男の子が座っていました。
息子さんですね。きっと。
お店のショーウインドーを何やら楽しそうに指さす男の子。
微笑みながらそれに応える女性。
心が和むのと同時に、胸の奥に違和感を感じた。
・・なんだろう、この感覚。
痛みとか、悲しみに、近い感じ。
「なぜ?」
自身に問いかけると、すぐに答えが返ってきた。
他でもない、私自身の、幼少期の記憶。
たぶん、あの男の子よりもまだ、ずっと幼い頃。
父親の膝の上に座って、家のまわりを一周、二周。
バイクのエンジン音と、自転車とは違う、風の心地よさと。
ドキドキして。
幼い私は、キャッキャ言って大はしゃぎしていた。
父親のその時の顔は・・見てなかったのかな。
覚えてない。
でもたぶん、笑ってたんだと思う。
家に帰って、父親が母に「Hをバイクに乗せてあげたら、すっごい喜んだ!」と報告したら、逆に怒られていた。
「あんな小さい子をバイクに乗せて走るなんて、何考えてるんだ!」「落っこちたらどうするんだっ!!」と(笑)
父親は「家の周り1~2周しただけだし」「そんなにスピードは出してなかった」と弁明していた。
・・たぶん、3~4歳くらいの記憶だと思うけど。
案外、詳細を覚えてるもんだ、と思わず笑った。
父親との記憶は正直、苦い思い出しか、残っていなくて。
こんな記憶も、あったんだな、と思った。
・・何で、大事にされていた時の記憶は、思い出せないんだろう。
その後も、今も、きっと私は父親に愛されているはずなのに。
それを思い出せたら、私の胸の奥底にある、父親に対する感情の在り方が、少しは変わるんじゃないかと思って。
記憶を掘り返してみたけれど。
・・途中で、やめた。
目を背けたい記憶ばかりが、目について。
それについても、今の私なら、耐えられるはずの内容なのに。
記憶の中の私は、いつ振り返っても、過去の私のままで。
故に、ツラい。
・・こころって、難しい。